クリニックを経営する先生方、日々の運営でこんなお悩みはないでしょうか。
医師として開業するまでに積み上げてきた努力は計り知れないものがあります。
でも、医療の腕と経営の腕は、また別の話。
「気づいたら収支が苦しくなっていた」というケースは、決して珍しくありません。
経営改善・事業再生を数多く支援してきた中小企業診断士の視点から、クリニック経営に役立つ考え方と、実際によくある改善事例をご紹介します。
クリニックの収入は、診療報酬によって単価がほぼ決まっています。
つまり、収益を上げるには「患者数を増やすこと」が最大のポイントです。
統計データによれば、一般診療所の1日あたりの患者数は平均30人前後。
効率のよいクリニックでは、1日40人以上を診ているケースも多くあります。
こうした「数字で見る自院の状態」が、経営改善の出発点になります。
ある内科クリニックでは、「そこそこ忙しいが収益が上がらない」状態が続いていました。
改めて1日あたりの患者数を曜日別・時間帯別に整理すると、午後の診療時間帯に極端に患者が少ない時間が発生していることが判明。
受付の予約調整の仕方を見直したところ、患者数が増加し、同じスタッフ数で収益が改善しました。
「なんとなく忙しい」と「数字で見る」は、全く別物です。
クリニックの人件費率の目安は、売上(医業収益)の50%前後といわれています。
これを大きく上回っている場合は、経営改善の重要なサインです。
ただし、「人を減らす」という発想は危険です。
医療は人が主役のサービスですので、スタッフが減れば診察の質が下がり、患者数の減少につながる悪循環になります。
大切なのは、「人の数」より「人の動き方」を見直すことです。
ある老舗クリニックでは、人件費率が60%を超えていました。
原因を探ると、会計の締め作業が毎日長時間かかっており、スタッフ全員の残業が常態化していることが判明。
医療会計システムの導入と自動精算機の設置を進めたところ、患者の待ち時間も大幅に短縮され、スタッフの残業も減少。
人件費率は55%まで改善し、職場の雰囲気も明るくなりました。
「忙しい」の原因は、意外なところに潜んでいます。
クリニックの決算書を見るとき、一つ注意が必要なことがあります。
それは、院長先生の報酬が経費として計上されているため、「見かけ上の利益」と「実際の収益力」がずれやすいということです。
たとえば、
これらは合法的な経費ですが、実態としては院長先生の報酬に近い性質のものです。
これらを合わせて「実質的な収益力」を把握しないと、本当にクリニックが儲かっているかどうかが見えてきません。
ある歯科クリニックでは、決算書上の利益は少ないものの、資金繰りは何とか回っているという状況でした。
実態を整理すると、院長・配偶者の報酬・地代家賃の合計が実際の収益力を圧迫しており、借入返済の余裕がほとんどないことが判明。
報酬体系の見直しと、不要な経費の精査を行ったことで、財務が安定し、設備投資のための借入が可能な状態に改善しました。
「利益が少ない=経営が苦しい」とは限りません。数字の中身を一緒に読み解きましょう。
診療報酬が公定価格である以上、クリニック間で「価格競争」は起こりにくいのが現実です。
では、患者さんはどこで選ぶのか。
それは「先生やスタッフとの相性」「待ち時間」「院内の雰囲気」です。
特に、内科・小児科・心療内科などは「また先生に診てもらいたい」という感情的な動機が再来院に直結します。
これらは「医療の質」とは別の話ですが、患者数に直接影響する、経営上の重要な要素です。
ある小児科クリニックでは、医師の腕は評判なのに再来院率が低いという課題がありました。
ヒアリングすると、「受付スタッフの電話対応が冷たい」という声が複数あることが判明。
スタッフへの接遇研修と、予約システムの見直しを行ったところ、口コミ評価が改善し、患者数が増加に転じました。
医療の質とホスピタリティは、車の両輪です。
最新の医療機器や内装リニューアルは、集患にも有効な差別化要因になります。
一方で、設備投資の返済に追われて資金繰りが苦しくなるクリニックも少なくありません。
ポイントは、投資前に「この投資で何人患者が増えるか」「返済に何年かかるか」をきちんと試算することです。
ある眼科クリニックでは、最新の検査機器を導入したところ、月々の返済負担が重くなり、資金繰りが急激に悪化しました。
事業計画を改めて整理し、一部設備をリースに切り替えること、および診療報酬加算が取得できる体制整備を同時に行うことで、収支バランスを回復させることができました。
「良い機器を入れれば患者が来る」は、前提を確認してから進めましょう。
クリニックの経営改善・事業再生は、決して特別なことをする必要はありません。
これらを自院の実情に合わせて少しずつ実践するだけで、数字にも、現場にも、確実に変化が現れます。
「うちのクリニックでもできそうだ」
そう感じたところから、経営改善はもう始まっています。
ひとりで悩まず、ぜひ一度ご相談ください。親身にお話をお聞きします。